今回は、これから大学でラグビーをしようと考えている高校生に向けて、私の大学ラグビー部時代の体験談を書いていきます。
大学のラグビー部というところは、全国の高校から有望な選手がいっぱい入って来ます。
当時は、高校時代に花園で対戦した選手も居て、再会したうれしい気持ちと新しい環境での不安な気持ちが入り混じっていたのを憶えています。
このような気持ちでスタートした大学ラグビーにおいて、私にとって特に印象に残っている2試合についてご紹介いたします。
まさかの大抜擢で1部昇格を達成!
まず、1試合目は2年生の時の話です。
当時、私の大学はリーグ戦グループの2部に所属していました。
2部リーグですから、1部リーグよりも弱いチームのグループということになります。
その中で私たちは、1部昇格を目標に1年間戦ってきました。
そして、2部リーグで優勝し1部昇格へのチャンスをつかむことができました。2部の1位
チームと1部の最下位チームが戦う「入れ替え戦」で勝てば、1部昇格が達成できるのです。
しかし、当時の私は2部のリーグ戦では控え選手にまわり試合には出場していませんでした。
それがなんと、1部昇格をかけた超大事な試合に私がスタンドオフに抜擢されたのです。
メンバー発表は試合前日の練習後に行われます。グランドで監督から一人ずつ公式ジャージーを渡されるのです。
私は、スタメンに選ばれるとは思ってなかったので、名前を呼ばれたときは、ものすごくビックリしました。
うれしさ半面、責任の重大さで胃が痛くなりました。なんてったって、勝つか負けるかで天国と地獄ほどの違いがあります。
結局、その夜は一睡もできず試合当日を迎えました。
対戦相手は、1部最下位と言っても私たちにとっては強敵です。
さらに、私の対面が高校時代の2つ上の先輩でした。なんともやりずらい状況で試合は始まりました。
当日は、雨中での決戦となったため、私はバックスへの展開攻撃はせず、キックを多用したアップアンドアンダーでフォワードを前に出す戦法をとりました。
流石に、対面の先輩もキック戦法をとり、キック合戦のような試合となりました。
私は、試合の中盤あたりから、フォワードを前へ出す有効なキックで、フォワード戦に持ち込めばいい勝負なると確信しました。
そして、常に敵陣で試合を進めた私たちは、僅差で勝利することができたのです。
見事に1部昇格決定です。
この時は、うれしいのはもちろんですが、それよりもホッとした気持ちの方は遥かに大きかったように思います。
ところで、何で私が大事な試合に大抜擢されたのか考えてみました。
私は、キックが得意でした。
試合前日の天気予報では翌日は雨予報が出てましたので、監督は、それを見越してキック戦法を予測して私を選んだのかなあと思っています。
この試合で得た教訓は、何を期待されているかを考えて準備することです。
仮に私がキックミスを連発していたら間違いなく負けていたでしょう。
なので、大事な場面で自分の力を発揮するためには、日頃から努力を重ね、どんな状況でもミスをしないくらい自分のものにすることが大事です。
大学ラグビー最後の試合はレギュラー獲得ならず
次のエピソードは、4年時の大学で最後の試合でのことです。
それは、3年生の時に2部へ降格してしまった為、再び1部昇格を賭けての入れ替え戦でした。
しかし、私は、この最後の試合に出場することが出来なかったのです。
その理由は、ひざの故障が完治してなかったこともありますが、2年生の選手の方がちょうど伸びてる時期で勢いがあったのも要因だったと思います。
恒例である試合前日のメンバー発表の儀式で、とても印象深い出来事がありました。
監督が1番のポジションから順番に名前を読み上げてジャージーを渡すのですが、9番の選手を呼んだあと沈黙してしまったのです。
次の10番は私のポジションです。
まわりのみんなも何があったんだろうという顔をしてました。
どのくらい時間が経ったでしょうか。
5分か10分か、ものすごく長く感じたのを憶えています。
その時、私は悟りました。
きっと監督は、私の名前を呼ぶことが出来ないので、申し訳ないという思いなのだろう。
監督にとっては苦渋の決断だったと思いますが、自分としては不完全な状態の私より、活きのいい2年生の方がチームにとって必要だと思っていたので気持ちの整理はついていました。
そして、監督が涙声で2年生の名前を呼んだのでした。
私は、監督のその時の感情に対して感謝の気持ちでいっぱいになりました。
大学ラグビー最後の試合、私は控え選手としてベンチから試合を見ていました。
試合開始早々、相手との実力の違いがすぐにわかりました。ファーストスクラムで敵のフォワードに一気に押さえれてしまったのです。
それは、戦ってるメンバーが一番わかったと思います。
そして試合は、終始相手のペースで進み、見せ場をつくることもできず負けてしまいました。
私は、試合に負けて泣いてる選手たちに声をかけることもできず、ただ立ちすくんでいたのを憶えています。
キャプテンが私の胸で泣きじゃくっています。
私は、不思議と冷静に「お疲れさん」と言いました。
こうして私の大学ラグビーは終わりました。
大学ラグビーは子供を大人へ成長させてくれるもの
以上、2つのお話を書きましたが、2年生の時は4年生からレギュラーを奪い、4年生になったら今度は2年生にレギュラーを奪われるという何とも皮肉な経験をしました。
大学ラグビーでは、有終の美を飾ることはできませんでしたので、悔いは残っています。
しかし、ラグビーという本音の世界で、仲間と競争しながら切磋琢磨できたことは、何物にも代えがたい財産となりました。
個人競技は自分ひとりでも試合に出ることは出来ますが、団体競技の場合、試合に出るためにはチーム内での競争に勝たなければなりません。
そのため、仲間同士で衝突することも多々あります。
特にラグビーは、格闘技の要素があります。レギュラーを決める紅白戦では、身体と身体で
ぶつかり合い、時には感情的になってケンカになることも珍しくありません。
でも、試合が終わって寮に帰れば、何もなかったように仲良くなります。
不思議ですよね。
やっぱり本音の世界で勝負しているからなのでしょうか。
そして、こういう経験を経ることで、社会に出ていく準備ができていくのかなあと感じます。
大学ラグビーとは、子供を大人へと成長させてくれるものなんですね。
それでは、また。
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