このサイトでは、これからラグビーを始めようと考えてる学生や、現役プレイヤーの悩みや疑問に、私のラグビー人生(高校、大学、トップリーグ)を踏まえてお答えしていきます。
まずは、私のラグビー経歴をご紹介します。
私は高校からラグビーを始めました。中学校までは野球に熱中していて、プロ野球選手になるのが夢でした。それが、なぜラグビーなのか?当時は野球が強い強豪校へ進学を考えていましたが、どこの強豪校からもオファーが無かったので、野球への情熱が一気に冷めてしまいました。
さてどうするか?と考えた時に、父親がやっていたラグビーに興味が湧きました。父親も高校からラグビーを始めて、社会人までプレーしました。私は、ラグビーなら高校から始める初心者が多いので、強豪校でもレギュラーになれるチャンスがあるのではないかと思いラグビーを始める決意をしました。
そして、どうせやるなら全国大会に出て日本一になりたいと思い、東京の強豪校に入学しました。当時、東京では、目黒と国学院久我山の2強時代で、私は目黒を選びました。なぜ、目黒かと言うとラグビー経験者が久我山は5割に対して目黒は1割と聞いたので、それが決めてでした。
中学の卒業式も終わり、最後の春休みのある日、私は父親と共に目黒高の梅木監督へ挨拶するため八幡山の明大グランドに向かいました。グランドに到着し監督のもとへ挨拶に行くと、監督は試合に視線を向けたまま、「すぐに着替えてきなさい」と言いました。
私も父親も固まったままでいると「早くしなさい!」と再び。入学前だし練習に参加する気は全く考えてなかったから、当然練習着なんて持ってません。でもそんなことは通用せず隣に居た父兄に誘導されて、子汚いジャージを着せられ、ルールも何もわからないまま練習に参加しました。
何とか練習も終わり、帰る支度をしていると、また父兄が来て「明日から九州合宿なので、これを用意してください」と紙を渡されました。「何だって!」驚きの連続です。それから急いでラグビー用品を買いに原宿まで行きました。道中で父親が私に言った言葉は今でも忘れません。「野球の方が良かったんじゃないか。。」もう手遅れです。こうして私のラグビー人生は始まりました。
高校では2年生からレギュラーになり、全国大会にも出場しました。目標の日本一は達成出来ませんでしたが準優勝までいきました。私がレギュラーになった経緯は、2年生当初、3軍チームで出場したある試合がきっかけでした。試合中、グランド脇から監督の声が聞こえました。
「あいつの名前は何だ?」それに対して父兄が「〇〇です」と私の名前を言っています。私は内心、自分の名前すら憶えられていないことに愕然としました。しかし、その試合を境に私は1軍チームで出場するようになりました。何が良かったのか?自己分析すると、一つはキック力です。
正確且つ飛距離の出るタッチキックを連発しました。二つはゲームコントロールです。日頃から強いチームのゲームの組立を観察して真似をしていました。高校3年間では大けがも経験し挫折も味わいましたが、それを乗り越えたことが今でも大きな自信となっています。
その後、幸いにも某大学からオファーがあり、ラグビーを続けることになりました。その頃から社会人ラグビーに憧れを抱くようになり、今度は企業からオファーをもらうことをモチベーションに頑張りました。
そして、たまたま私の試合を見ていた某トップリーグ企業のスカウトの方に声を掛けて頂き、トップリーグの選手になることが出来ました。トップリーグでは6年間プレーして勇退し、その後は社業に専念しております。以上が私のラグビー経歴です。
さて、ラグビーは1チーム15人でやる競技です。フォワード8人、バックス7人で構成されていてポジション毎に役割が決まっています。フォワードは、スクラムを組んだり、モールで相手を押し込んだり、相手からボールを奪ったりするので、身体が大きくて筋力が強い方が有利です。
バックスは、走りながらパスを回して相手を抜いたり、タックルをして相手を止めたり、ボールをキックして大きく前進する役割がありますので、脚の速さやキック力が求められます。
それでは、初心者がレギュラーになるために必要な条件をポジション別に見ていきましょう。
フォワードでレギュラー目指すなら、とにかく筋力アップ!
【プロップ】スクラムの最前列で身体を張る縁の下の力持ちです。
脚の速さ・・・はっきり言って速さは求められていませんが、100mは13秒以内を目標にしましょう。あまりに遅いと試合のテンポについて行けません。私の高校時代、プロップで13秒以上でレギュラーになれた選手は居ませんでした。いや、一人例外が居ました。その選手がスクラムで押し負けることはありませんでした。
筋力・・・最も重要なのは首の筋力です。これが強くないとスクラムを組んだ時に相手に首を取られてしまい押し負けてしまいます。それから太ももの筋力も大事です。スクラムの姿勢では膝を90度に曲げた状態を維持して踏ん張らなければなりません。
この姿勢は、初心者は必ず最初にやる練習です。ラグビーの基本姿勢でありタックルに入る姿勢でもあります。私も最初は太ももの筋肉痛が酷くて練習終わって寮へ帰る満員電車にも関わらず地ベタに座り込んだほどでした。
キック力・・・必要ありません。私の長いラグビー人生でプロップが試合でボールを蹴ったのを見たことがありません。
【フッカー】スクラムの最前列の真ん中で、スクラムハーフが入れたボールを足で扱うことができる器用な選手です。
脚の速さ・・・速さは求められていませんが、100m13秒以内は必須です。ただ、フッカーはプロップよりも若干体重が軽い傾向があるので、比較的脚の速い選手が多いです。
筋力・・・プロップと同様で、首の筋力と太ももの筋力が強くなければなりません。更に両側のプロップをバインドする腕力も必要です。この腕力は脅威的で、私は試合中に片腕一本で自分の首根っこを捕まれ簡単に引き倒された経験があります。
キック力・・・必要ありません。プロップでボールを蹴る選手は見たことありませんが、フッカーの選手は足が器用なので、試合中たまに蹴る選手がいます。
【ロック】チームの中で一番身長が高く、ラインアウト時にジャンパーとして活躍します。
脚の速さ・・・速い方が良いです。キックオフやハイパントキックのボールを追いかける時に必要です。100m12秒台以内です。私はキックオフのボールを蹴っていましたが、ロックの脚が遅いとボールの落下地点に追いつかないので、相手にボールを獲られてしまいます。
筋力・・・チームで一番の怪力の持ち主です。特に跳躍力が求められラインアウトやキックオフのボールをキャッチする時に必要です。初心者でもバレーボール経験者は有利です。
キック力・・・特に必要ありません。ロックはボールを持ったら絶対離さず、とにかく突進あるのみです。私が見てきたロックは、皆そうでした。
【フランカー】バックスの攻撃時にサポートして走り回るスタミナが必要です。また、タックルが好きな選手が多いです。
脚の速さ・・・誰よりも早くボールがある場所に行く速さが求められます。100m11秒台であれば文句ありません。それに併せて一試合その速さを持続できればレギュラーを獲れます。私の大学時代にバックスでレギュラーになれなくて、フランカーにコンバートして脚の速さを生かしてレギュラーになった選手がいました。
筋力・・・脚力はもちろんですが、相手をタックルする時の腕力が必要です。フランカーの選手はタックル命と言われるほど、タックルに強い思い入れがあります。私はタックル練習は痛いので一番嫌いでした。普通はタックルバックを使って練習するのですが、私の高校時代は1対1の生身でぶつかり合ってたので、生傷が絶えませんでした。
キック力・・・特に必要ありません。
【ナンバーエイト】フォワードの最後尾のポジションで攻守の要です。リーダーシップがありキャプテンを務める選手が多いです。
脚の速さ・・・フランカーと同様で100m11秒台の速さが必要です。ナンバーエイトはバックスがディフェンスで前に出た時に、その後ろをカバーリングする走力が必要になります。私は、相手のナンバーエイトの走力が遅いと判断した時は、ボールを早く外へ展開する戦術でトライを獲っていました。
筋力・・・相手のタックルを跳ね返す爆発的な全身の強さと瞬発力が求められます。ナンバーエイトが強いチームは概ね強いです。例えば、相手チームの選手が3人掛かりでタックルに来ても、それを跳ね返し引きずりながらも前進しトライを決められれば、相手にとって脅威となります。
キック力・・・特に必要ありません。
バックスはスピードとキック力を磨け!
【スクラムハーフ】パスの職人であり、フォワードとバックスの繋ぎ役です。俊敏性と判断力が求められるポジションです。また、身体が小さくてもレギュラーになれます。
脚の速さ・・・30m~50mの短い距離のスピードが必要です。50mなら6秒以内が必須です。スクラムハーフは、ボールがあるポイントに常に一番先に行って、次のプレーの判断をしなければいけません。高校時代、私とコンビを組んでいたスクラムハーフは、身体は小さいけど、ネズミのように動き回る選手でした。
筋力・・・フォワード周辺でのプレーが多いので、当たり負けない強靭な足腰の強さが必要です。また、正確且つ素早いパスが求められるので、腕力と手首のスナップを鍛える必要があります。私が手首を鍛えるためにやっていたのは、雑巾絞りです。これ結構効果あります。
キック力・・・ハイパント攻撃においてボールを高く正確に蹴るスキルが要求されます。これが出来ると、攻撃のオプションが増えるので、相手にとってすごく嫌な選手になれます。
【スタンドオフ】バックス攻撃の起点となり、パス、ランニング、キック、状況判断力、全てにおいて高いスキルが必要です。ゲームを組み立てる司令塔と言われています。
脚の速さ・・・スクラムハーフと同様で短い距離でのスピードが必要です。相手のディフェンスのズレを逃さずに一瞬のスピードで抜き去る。私は、このプレーが得意で常に狙っていました。
筋力・・・相手をステップで抜くためのふくらはぎの筋力と、ボールを遠くへ蹴るための膝下を速く振りぬく筋力が必要です。私はキック力をアップするために、固定したゴムチューブを足首に付けて振りぬく練習を毎日100回やってました。
キック力・・・タッチキックの場合、正確に40m以上を蹴るキック力が必須です。自陣の22m内からタッチキックを蹴る場合、40m蹴ればハーフラインまで挽回することができます。また、ゴールキックの場合は80%以上の成功率が目標です。世界のトップレベル選手の平均は、70%~80%です。やはりサッカー経験者は上手かったです。
【センター】ディフェンスではタックルの機会が多く、アタックではアシスト的な役割が多い、縁の下の力持ち的なポジションです。
脚の速さ・・・スタンドオフと同様で、30m位の短距離のスピードと、ディフェンスラインの隙間を突破する瞬発力が必要です。
筋力・・・バックス攻撃ではボールを持って縦に突破を図ることが多いので、強靭な足腰が必要です。また、タックルされても簡単に倒れないことも連続攻撃ではとても重要です。私の大学時代のチームメイトの一人は、強靭な足腰を作って縦の突進力だけでレギュラーを獲得しました。
キック力・・・陣地を稼ぐためのオープンキックで、40m以上を正確に蹴る力が必要です。これはセンター特有のプレーで、このスキルが高いとレギュラーへの近道になります。
【ウイング】多くのトライを獲ることが求められるポジションです。チームで一番の俊足です。
脚の速さ・・・100m11秒以内は必須です。更に、真っ直ぐ走るだけでなく左右のステップで相手を抜くスキルがあれば鬼に金棒です。脚を速くする練習は、グランド一周ダッシュをインターバルを入れながら全力で毎日10本やることです。私は高校時代に、この練習で12秒台から11秒台になりました。
筋力・・・常に80mを走り切る脚力とスタミナが必要です。試合終了間際のロスタイムで負けてる場合、自陣であってもキックを蹴らずにバックスにボールを回してトライを獲りに行かなければ負けてしまいます。そうした時にウイングは相手のタックルを振り切って足り切る脚力とスタミナが必須となります。このプレーが出来るとチームメイトからの信頼を得てレギュラーも獲得できます。
キック力・・・相手の背後に蹴るショートパントのスキルが必要です。このシチュエーションは多いので、毎日の個人練習でコツコツと取り組めば必ず習得できます。
【フルバック】チームの最後尾で守備をする最後の砦です。攻撃でもエキストラとして敵のバックラインの突破を図る重要なポジションです。
脚の速さ・・・やはり100mは11秒台が必須です。私はフルバックの経験もありますが、バックスのサイン攻撃で、フルバックが相手のディフェンスラインを突破する瞬間は、味方ラインとのスピードのギャップが肝となります。従って、ギャップを生むためには11秒台のスピードが必要となります。
筋力・・・守備の最後の砦として一発のタックルで相手を倒す腕力が必要です。フルバックのディフェンスは、相手が味方ディフェンスラインを突破して1対1となるケースが多いです。なので、何が何でも相手を捕まえて離さない腕力が必要になります。私は腕力を強くするために毎日鉄棒で懸垂10回を10セット行っていました。効果は抜群です。
キック力・・・スタンドオフ同様、正確で飛距離の出るキック力が必要です。特にフルバックは、最後尾から敵陣まで攻め入るキックを多用しますので、サッカー経験者は有利です。また、相手がキックしたボールをキャッチするフィールディングが求められますが、私は中学までの野球経験が凄く活きました。
「ラグビーとは何だ?」「ラグビーとはボールだよ」諦めない心が大事!
以上、これからラグビーを始める皆さんの参考になれば幸いです。
さて、最後に私の高校時代のエピソードを一つご紹介します。
高校3年時のある日の練習試合での出来事です。試合が終わり私たちは監督のもとに集合しました。監督はしばらく黙っていて、私は内心何を言われるかとビビッていました。そして私の名前を呼んで、こう言いました。
「ラグビーとは何だ?」私は、急に何を言ってるの?と思いながら思考を巡らしていると、監督が「ラグビーとはボールだよ」と先に言いました。私がキョトンとしていると、監督はそれ以上何も言いませんでした。というエピソードです。モヤモヤしますよね。
私は、練習終了後、監督の言葉の意味を考えました。そして、その日の試合で何があったかを振り返ってみると、思い当たる場面が浮かびました。それは、私は味方が蹴ったボールを追いかけていて、相手は自分より前を走っていましたが、私は諦めずに追いかけ続けた時に、ボールが自分の方に跳ねて腕の中にすっぽり入ったのです。
ラグビーボールは楕円球なので、どこへ跳ねるかわかりません。監督は、この場面を指して”最後まで諦めない”ことの大切さを伝えたかったのだと、勝手に解釈していますが、ほんとのところは闇の中です。
ところで余談ですが、私は監督の選手起用について日頃から観察をしていました。高校の監督はスパルタ指導で有名でしたが、厳しく叱咤されても、なにくそと向かっていくような選手を起用してたと思います。やはり自分と性格の似た選手を使いたくなるのでしょう。
まだまだ、おもしろいエピソードがたくさんありますので、それはまた別の機会にご紹介しますね。
ご感想など頂けると嬉しいです。
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